GET for POST
概要
- 脆弱性の名前: GET for POST
- どんな問題か: 本来POSTメソッドを使用すべき処理にGETメソッドが使用されている状態。
- よくある発生シーン: Web APIの実装、フォームの送信処理、リダイレクト処理。
背景
- 問題視されるようになった背景: Webアプリケーションの複雑化に伴い、開発者がHTTPメソッドの適切な使用を誤ることが増えたため。また、RESTful APIの設計原則が浸透しておらず、GETメソッドをデータの更新処理に使用してしまうケースが見られる。
- クラウド設計や設定ミスによる実例: クラウド環境でAPI Gatewayを使用している場合、GETリクエストをバックエンドのPOSTエンドポイントに誤ってルーティングしてしまう設定ミスが発生することがある。
セキュリティ上のリスク
- どんな攻撃に悪用されるか:
- CSRF (Cross-Site Request Forgery) 攻撃: GETリクエストはURLにパラメータが含まれるため、攻撃者は悪意のあるWebサイトやメールを通じて、ユーザーに意図しない操作を実行させることができる。
- 情報漏洩: GETリクエストのパラメータはURLに含まれ、ブラウザの履歴やサーバーのログに記録されるため、機密情報が漏洩する可能性がある。
- キャッシュポイズニング: GETリクエストはキャッシュされる可能性があるため、機密情報がキャッシュに保存され、意図しないユーザーに情報が漏洩する可能性がある。
- 実被害が出た具体的なインシデント: 具体的なインシデントは特定できませんでしたが、過去には、銀行の振込処理にGETメソッドが使用され、CSRF攻撃によって不正な振込が行われた事例が報告されています。
対処方法の具体例
PHPでの対処
<?php
// POSTリクエストのみを受け付ける
if ($_SERVER['REQUEST_METHOD'] !== 'POST') {
http_response_code(405); // Method Not Allowed
header('Content-Type: application/json');
echo json_encode(['error' => 'Method Not Allowed']);
exit;
}
// フォームの例
?>
<form method="POST" action="/submit">
<input type="hidden" name="csrf_token" value="<?php echo generateToken(); ?>">
<input type="password" name="password">
<button type="submit">送信</button>
</form>
JavaScriptでの対処
// フォーム送信の制御
const form = document.querySelector('form');
form.addEventListener('submit', async (e) => {
e.preventDefault();
const formData = new FormData(form);
try {
const response = await fetch('/api/endpoint', {
method: 'POST',
body: formData,
headers: {
'X-CSRF-Token': document.querySelector('meta[name="csrf-token"]').content
}
});
const data = await response.json();
console.log('Success:', data);
} catch (error) {
console.error('Error:', error);
}
});
Pythonでの対処 (Flask)
from flask import request, jsonify
@app.route('/api/endpoint', methods=['POST'])
def handle_data():
if request.method != 'POST':
return jsonify({'error': 'Method Not Allowed'}), 405
data = request.get_json()
# POSTリクエストの処理
return jsonify({'status': 'success'})
ベストプラクティス
- HTTPメソッドの適切な使用: データの作成、更新、削除などの処理には、必ずPOST、PUT、DELETEなどの適切なHTTPメソッドを使用する。
- サーバーサイドでの検証: サーバーサイドで、リクエストのHTTPメソッドを検証し、不正なメソッドが使用された場合はエラーを返す。
- CSRF対策: フォームにはCSRFトークンを埋め込み、POSTリクエストの正当性を検証する。
- リダイレクト処理の注意: リダイレクト時に機密情報をURLに含めないようにする。POSTリクエスト後にリダイレクトする場合は、303 See Otherステータスコードを使用する。
検出方法
- OWASP ZAPでの検出時の出力例: OWASP ZAPでは、POSTメソッドを使用すべきエンドポイントに対してGETリクエストが送信された場合に、警告を表示する。
- 手動での確認: ブラウザの開発者ツールを使用し、ネットワークリクエストを監視し、不適切なHTTPメソッドが使用されていないかを確認する。また、curlコマンドを使用して、GETリクエストを送信し、サーバーの応答を確認する。
まとめ
- 重要度: Medium (機密情報の種類やWebサイトの構成によって変動します)
- 運用チームや開発者が意識すべきポイント:
- HTTPメソッドの適切な使用を徹底する
- サーバーサイドでの検証を実装する
- CSRF対策を実装する
- リダイレクト処理に注意する
- 再発防止の観点:
- 開発者向けのHTTPメソッドに関するトレーニングを実施する
- WebアプリケーションフレームワークのHTTPメソッドに関する設定を確認する
- API Gatewayなどの設定ミスを防ぐためのIaC (Infrastructure as Code) ポリシーを導入する
補足資料リンクや参考URL
- RFC 7231: Hypertext Transfer Protocol (HTTP/1.1): Semantics and Content: https://datatracker.ietf.org/doc/html/rfc7231
この解説記事が、脆弱性理解の一助となれば幸いです。