Cross-Domain Misconfiguration
概要
- 脆弱性の名前: Cross-Domain Misconfiguration (クロスドメイン設定の不備)
- 問題の要点: Webアプリケーションのクロスオリジンリソース共有(CORS)設定が不適切であるため、異なるオリジンからの不正なアクセスを許可してしまう状態。
- よくある発生シーン: CORS設定の誤り、ワイルドカードの使用、開発環境から本番環境への移行時の設定ミスなど
背景
CORSは、Webページが異なるオリジン(ドメイン、プロトコル、ポート)のリソースにアクセスする際に、ブラウザがセキュリティ上の制限をかける仕組みです。
CORSの設定が不適切であると、攻撃者が悪意のあるWebサイトから、ユーザーのWebアプリケーションに対して不正なリクエストを送信し、機密情報を盗み取ったり、ユーザーの代わりに操作を実行したりする可能性があります。
クラウド環境では、複数のサービスが連携して動作することが多いため、CORSの設定ミスが問題視されています。
セキュリティ上のリスク
- クロスサイトスクリプティング(XSS)攻撃の悪用。
- 機密情報(APIキー、認証情報など)の漏洩。
- ユーザーアカウントの乗っ取り。
- Webサイトの改ざんや不正なコンテンツの表示。
対処方法の具体例
Apache2
誤った設定例
CORSを許可する設定で、ワイルドカードを使用している例:
# 誤った例: ワイルドカードを使用
Header set Access-Control-Allow-Origin "*"
正しい設定例
CORSを許可するオリジンを明示的に指定する例:
# 正しい例: オリジンを明示的に指定
Header set Access-Control-Allow-Origin "https://example.com"
Header set Access-Control-Allow-Credentials "true"
Header set Access-Control-Allow-Methods "GET, POST, OPTIONS"
Header set Access-Control-Allow-Headers "Content-Type, Authorization"
Nginx
誤った設定例
CORSを許可する設定で、ワイルドカードを使用している例:
# 誤った例: ワイルドカードを使用
add_header Access-Control-Allow-Origin "*";
正しい設定例
CORSを許可するオリジンを明示的に指定する例:
# 正しい例: オリジンを明示的に指定
add_header Access-Control-Allow-Origin "https://example.com";
add_header Access-Control-Allow-Credentials "true";
add_header Access-Control-Allow-Methods "GET, POST, OPTIONS";
add_header Access-Control-Allow-Headers "Content-Type, Authorization";
PHP
誤った設定例
CORSを許可する設定で、ワイルドカードを使用している例:
<?php
// 誤った例: ワイルドカードを使用
header("Access-Control-Allow-Origin: *");
?>
正しい設定例
CORSを許可するオリジンを明示的に指定する例:
<?php
// 正しい例: オリジンを明示的に指定
header("Access-Control-Allow-Origin: https://example.com");
header("Access-Control-Allow-Credentials: true");
header("Access-Control-Allow-Methods: GET, POST, OPTIONS");
header("Access-Control-Allow-Headers: Content-Type, Authorization");
?>
JavaScript
JavaScript自体でCORSの設定を行うことはできません。CORSの設定はWebサーバーで行う必要があります。
AWS
正しい設定例
API GatewayでCORSを設定する例:
- API GatewayのCORS設定で、許可するオリジン、メソッド、ヘッダーを明示的に指定します。
- ワイルドカードの使用は避け、必要なオリジンのみを許可するように設定します。
検出方法
OWASP ZAPでの出力例
- Alert 名: Cross-Domain Misconfiguration
- リスク: Middle
- URL: CORS設定が不適切なURL
- パラメータ: なし
- 詳細: CORS設定が不適切であるという情報
手動再現例
- Webブラウザの開発者ツールを開き、Consoleタブを選択します。
- 異なるオリジンから、Webアプリケーションに対してXMLHttpRequestまたはfetch APIを使用してリクエストを送信します。
- CORSエラーが発生しない場合、CORS設定が不適切である可能性があります。
// 異なるオリジンからのリクエスト例
fetch('https://example.com/api/data', {
method: 'GET',
mode: 'cors'
})
.then(response => response.json())
.then(data => console.log(data))
.catch(error => console.error('Error:', error));
まとめ
- CVSS 基本値: 5.8 (Medium)
- 運用チームや開発者が意識すべきポイント:
- CORS設定を適切に行い、必要なオリジンのみを許可する。
- ワイルドカードの使用は避け、具体的なオリジンを指定する。
- CORS設定を定期的に見直し、不要なオリジンを削除する。
- 開発環境と本番環境で異なるCORS設定を使用する。
- API GatewayなどのサービスでCORSを設定する場合は、設定ミスがないか確認する。
- 再発防止:
- 開発プロセス全体でセキュリティを考慮する(Security by Design)。
- コードレビューを実施し、CORS設定の誤りを早期に発見する。
- 自動脆弱性診断ツールを導入し、定期的にスキャンを行う。
- 開発者向けのセキュリティトレーニングを実施する。
補足資料・参考URL
以上の対策と検出方法を活用して、Cross-Domain Misconfigurationのリスクを低減してください。